Design from ahed 2013
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design from ahed 201315キゾチックアニマルを診療することで商圏がひろくなったのでしょうね。倉田●犬猫の病院だと、先ほどの腫瘍科とか眼科とかのスペシャリストでないかぎりは対象となる患者さんは、よくて2km四方ぐらいだと思います。エキゾチックアニマルを診療するということで、対象となる患者さんの地域が拡がると思います。また、PRをしやすいということもあります。腫瘍科など特定の分野を対象としていても、ホームページに「腫瘍科認定」「抗がん剤治療を数多くやっています」などと書かれている先生が多勢いらっしゃいますが、エキゾチックアニマルというのは、診てくれるとなると必ず来るわけです。うちの場合はフェレットを診ますというだけで患者さんは気にとめてくれました。岡田●開業のときに提案したロゴは、フェレットだけをあしらったものでした。デザイナーは犬や猫を入れないことで新鮮に感じていたようですが、ご覧になった先生から、犬や猫は入れなくて大丈夫かと聞かれました。倉田●あのときは、ほんとうに心配しました。でもまったくの杞憂で、患者さんにも好評でした。フェレットというのは、犬猫の患者さんにとって嫌な動物ではないんですね。待合室にフェレットがいても、入るのに抵抗があるというお話をうかがったことはありません。新たなステップアップをめざして移転の決意岡田●そうして開業されて、今年で丸10年になります。先生から移転をされたいとご相談を受けたのは開業後5年目です。なぜ、その時期に移転されようと考えられたんですか。倉田●手狭になったというのが、いちばん大きな理由です。何をするにして、まず広いスペースがほしいということでした。岡田●開業のときは、内部の設計にあたって患者さんの側をゆったりとしてくださいというご希望でした。患者さんのゾーンである診察室まではゆったりさせて、あとは残ったスペースでということでした。倉田●手術室も独立できませんでした。レントゲン室だけ別にして、オペと処置室を兼ねさせました。ですから、患者さんが増えるに従って、少し無理が出てきました。うちは血液検査が多いのですが、採血できる場所が奥のオペ台の上しかありません。獣医が2人のときでも2つの診察室で同時に採血が必要になると動きがとれなくなってしまったのです。待合室はゆったりしていたので患者さんが手狭に感じることはなかったと思いますが、内部のほうがとにかく窮屈で、人が増えるに従って食事をする場所もない状況でした。岡田●今回、前の病院とほぼ同じ商圏のこの高津の地に移転するにあたっては、用地探しにかなり苦労しましたが、ちょっとした僥倖もあってここに出会ってからはスムーズに進みました。スペースの点からは必ずしも100パーセント満足というわけにはいかなかったかもしれませんが、設計の工夫で十分質の向上が図れたのではないかと自負しています。病院経営については、くらた動物病院がこれまで10年この地で歩んでこられて患者さんたちの支持を得ていることがわかっていましたので、心配はしませんでした。問題は施設にどのようにボリューム感をもたせるかということでした。病院の計画にあたって、建築家とはどのようなことを話されましたか。倉田●いちばんはやはり動線というか、スペースの使い方ですね。病院機能の面はほとんど私の希望にそって設計していただきました。デザインに関してはかなりお任せしました。岡田●この待合室のスペースは圧迫感がないのではないかと感じています。先日もちょっとのぞいてみましたが、患者さんはみな受付の前あたりに行儀よくすわっていたものの、みなさん窮屈そうではありませんでした。倉田●実は、椅子の座面が少し高めなんです。それで行儀よさそうになるのではないかと思います。ただ、待合室は奥に行くほど拡がっているのですが、それがなかなか伝わりにくいのか、奥ではなく手前に座ってしまう患者さんが多いので、なるべく奥に誘導できる仕掛けを建築家に考えていただいています。岡田●新規開業でも、新築移転でも、動物病院をつくって終わりではなく、少しずつ進化していくというのがいい病院だと思います。何か問題点があったときにそれを相談して解決していくパートナーとしてahedがあればいいなと思っています。例えばロゴなども、前のを捨てるのではなくプラスアルファすることで、昔のイメージは大事にしつつもちょっと変化をつけてご提案しました。倉田●開業時のフェレットを2つあしらったロゴは、患者さんの側からはよりひろい範囲を診るという印象をもたれたように思います。奥行の深さを感じられたのかなという気がします。でも、フェレットには特化できました。そして、今度のはもっと素直になりました。未来につなげていくこれからの10年岡田●移転やリニューアルというのは、未来をみすえていくことが必要です。まだ移転したばかりですが、これから、くらた動物病院をどのようにしていこうとお考えですか。倉田●そうですね、私がいなくても勤務している獣医師と動物看護師だけでも病院がちゃんと回るような、そういう体制にできるだけ近づけたいなと思います。岡田●ぜひそうなるといいですね。10年後のくらた動物病院がすごく楽しみです。10年かけてここに移って、10年かけて次のくらた動物病院につなげていくということですね。倉田●まだ移ったばかりなので、とにかく今はこの器で、獣医師が3人、6人いる動物看護師の4~5人が常時勤務するこの体制をしっかりと確立していくことが急務です。まずはこの1、2年で充実させていって、その後に次を考えたいと思います。岡田●動物病院を取り巻く環境はずいぶん変わりました。これから、人口が減少してくる日本では、競争が厳しくなってくると思います。そのなかで、ahedは何ができるんだろうと考えると、今までがんばってこられた先生方のステップアップのお手伝いをする方向にシフト変更していこうと考えています。質のいい動物病院をつくるお手伝いをしていきたいということです。 先生には、これからの10年を次につなげるために、ぜひがんばっていただきたいと思います。きょうは、ありがとうございました。くらた動物病院http://www.kurata-vet.com2004年、ahedサポートによりテナントで新規開業。当初よりシンボルマークに「フェレット」を採用。「フェレット」では全国的に知られる病院となる。地域の動物により力を入れたいと、2013年近隣に移転・新築でリニューアル開院。土地探しと病院設計は番場俊宏(エイバンバ)。サインシンボルから診察券などグラフィックスまで岡野祐三(デザインコンビビア)。

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