Design from ahed 2013
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6ahedのデザインとデザイナーを紹介───4建築や建物は物理的に一定の空間を占めるので、結果的にある情報を発信することになります。明治、大正時代くらいまでは、銀行はギリシャ神殿様式、図書館・百貨店・大学はゴシック様式、病院はルネッサンス様式、役所は帝冠様式などなど、建物の中に入る中身によって外観の様式を違えていました。つまり施設ごとに建物のデザインの様式を違えることで格式を与え、それぞれが社会にとって必要な施設であるという情報を与えていました。そしてその責任として都市や町に公共的なスペースを提供して来ました。その他の商業的な施設は浅草の仲見世のように旗だけあればいい、そういう考えでした。動物病院もこれだけ数が増えてくれば、社会に必要な都市施設として、一つのあり方を示すべき時期に来ています。対象が動物だとしても、医療という崇高な行為がおこなわれる施設であり、それに見合った格式を建築で表現することが必要です。加えて都市景観の一翼を担う施設としての品のあるスタイルを確立すべきです。旗だけたてればいいという段階ではすでにないと考えます。このような問題意識のもと、具体的にミズノ動物クリニックのデザインでどのように考えたかを説明していきます。まず外に人々が滞在することができる場所をつくろうと考えました。外は、太陽光もあり、雨も降るので過酷な環境ではありますが、庇があればかなり快適になります。日本では、古来より神社やお寺の軒下が交流の場になっていましたが、それと同じようなアイデアで大きな庇をデザインしました。外部に滞在できそうな外部空間があることで、看板やサインなど過剰な商業的手法を使わずとも、人々を建物に引き寄せる磁場が発生すると考えました。  また待合は広場としてデザインしました。天井は全て天窓とし、半外部のような明るい空間とし、吹抜けにして上階の部屋につながる窓を設けることで、中世のヨーロッパの広場のような、ヒューマンスケールの賑わいを演出しています。  外部には日本の伝統的な軒下空間、内部の待合においては中世ヨーロッパの広場をイメージソースとしてモダンなデザインに統合したのがミズノ動物クリニックです。実際に完成された建築を見て、都市施設としての動物病院のデザインとして汎用性のある手法だと実感しており、様々に展開していきたいと考えています。鈴木謙介 鈴木謙介建築設計事務所 代表 1973年横浜出身。2000年早稲田大学大学院建築学科入江研究室卒。2000~2004年椎名英三建築設計事務所勤務を経て、2005年鈴木謙介建築設計事務所設立。 本来、人間がそこで生活し、つつまれる環境というものは、消費されるべきものではなく、空間に経験という時間の染み込んだ「場所」、かけがえのない居「場所」 であるべきです。そのかけがえのない「場所」をつくることは建築家にしかできないことであり、それが唯一の建築家の存在意義だと私は考えます。http://www.ks-aa.com/動物病院はそろそろ都市施設としての社会的責任を果たす時が来た!ミズノ動物クリニック

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